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親が認知症でも売却できる?不動産売却の制度や注意点についても解説

不動産の売却

田中 康義

筆者 田中 康義

不動産キャリア12年

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住宅・不動産・保険・資産運用・教育資金・老後・生活全般のお金に関する事柄を、ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士・競売不動産取扱主任者・日商簿記2級・全珠連暗算1級を持つ私が、「お住まいコンシェルジュ」家造りコンサルティングサービスを通して、皆様のお役に立てるようお付き合いして参ります。

親が認知症でも売却できる?不動産売却の制度や注意点についても解説

親が認知症を発症した場合、その不動産を売却しようとしても手続きに多くの制限が生じることをご存じでしょうか。
とくに、契約時の意思能力が問われるため、正しい判断ができない状態では売却が難しくなる可能性があります。
また、介護費用を確保するため早急な売却を希望しても、対応を誤るとトラブルに発展するリスクもあるので注意が必要です。
この記事では、認知症の親名義の不動産を売却する際の注意点や、成年後見制度の活用方法について解説します。

親が認知症になったら不動産は売却できない

親が認知症になったら不動産は売却できない

親が認知症を発症すると、不動産の売却手続きには制約が生じます。
家族としては早めに資産の整理を進めたいところですが、法律上の要件を満たさないと売却できない場合もあるのです。
ここでは、「意思能力」「委任状」「成年後見制度」の3つの観点から注意点を解説します。

意思能力

不動産を売却するには、契約の内容や結果を理解し、自ら判断できる「意思能力」が必要です。
認知症と診断されてもすぐに意思能力が失われるわけではありませんが、症状の進行度合いによっては判断力が著しく低下することがあります。
意思能力が著しく低下していると判断された場合、売却契約そのものが無効になる可能性があり、後の紛争に発展するケースも少なくありません。
そのため、不動産の売却を検討する際には、医師の診断書の内容や家族の見守りが極めて重要です。
とくに、どの時点で本人が契約の意味を十分に理解していたのか、客観的に示すことが必要となります。

委任状の利用

家族が認知症の親の代わりに売却手続きを進める方法として、委任状の利用があります。
ただし、作成者である親に意思能力がなければ委任状自体が無効となる可能性があります。
また、委任状には「誰が」「何を」「どのように」委任するかを明確に記す必要があり、必要事項を曖昧にすると売却手続きがスムーズに進まないこともあるでしょう。
さらに、不動産に関する委任状は高額な財産行為に関わるため、家族間のトラブルを防ぐためにも、できるだけ詳細に記載しておくことが望ましいです。
内容が広範な場合は特別代理人の選任が求められることもあるため、専門家に相談しながら進めると安心です。

成年後見制度の活用

認知症によって親の意思能力が著しく低下している場合、成年後見制度を利用することが一般的です。
これは、家庭裁判所が選んだ成年後見人が本人に代わって法律行為をおこなう制度で、不動産売却などの資産管理も可能となります。
親族が成年後見人となると、家族の意向を反映しやすい一方、金銭管理の明確化や第三者の目による監督が不十分になる点が懸念です。
一方、司法書士や弁護士などの専門職が選任される場合は、財産管理や契約手続きに精通した立場から適切な判断が期待できますが、費用面が大きな課題となることもあります。
ただし、親が住んでいた自宅を売却する場合は家庭裁判所の許可が必要で、申し立てから時間を要します。
制度は一度開始すると、原則本人が亡くなるまで継続するため、後の財産管理も見据えて慎重に検討することが大切です。

親が認知症になったときの不動産売却トラブル

親が認知症になったときの不動産売却トラブル

親が認知症を発症した場合、不動産の売却でトラブルが発生する可能性があります。
家族が善意で動いても、手続きが不備であれば契約が無効になる場合があるため注意が必要です。
ここでは、「無断売却」「介護費用の問題」「本人による不適切な契約」という代表的なトラブルを解説します。

無断売却

認知症の親の同意なしに、家族が不動産を売却しようとするケースがあります。
たとえ、子どもや配偶者でも、正当な手続きを踏まずに他人の財産を処分することはできません。
実際には、急な介護費用や施設入所が必要な状況で独断的に動いてしまう例がみられますが、後に契約が無効となった場合、買主との損害賠償問題に発展する可能性があります。
また、ほかの相続人が異議を唱えた場合、売却そのものが取り消される恐れもあるため、家族間でよく協議しながら進めることが望ましいです。

介護費用の問題

高額な介護費用を確保するために、不動産の売却を検討する家族も多いです。
介護施設の入所や医療費が長期にわたると、家計への負担は大きくなります。
しかし、親の意思能力が不足している状態で売却手続きを進めると、後に契約が取り消される可能性があります。
売却代金をすでに使っていた場合には、返還請求などの法的リスクが生じることもあるため、慎重な対応が必要です。
もし、早い段階で介護費用を確保したいのであれば、成年後見制度の申し立てを検討するなど、法的に認められた手段で手続きをおこなうことが重要です。

本人による不適切な契約

認知症の初期では、本人が見た目には普段通りに生活している場合があります。
この段階で本人が不動産を売却してしまい、後になって契約が無効とされる可能性も否定できません。
とくに、悪意のある第三者が判断力の低下を狙って不当に安い価格で買い取ろうとするケースには注意が必要です。
家族が後から気づいても、取り消しには多大な手間がかかります。
また、不動産業者の中には高齢者に対して積極的な営業活動をおこなうところもあるため、親の周囲に不審な動きがないか普段から目を配ることが大切です。

親が認知症になったとき不動産を売却するための「成年後見制度」

親が認知症になったとき不動産を売却するための「成年後見制度」

親が認知症を発症すると、不動産を売却する手続きは通常より困難になります。
その際に活用できるのが、先述した「成年後見制度」です。
ここでは、制度の概要や種類、利用条件をより詳しく解説します。

成年後見人制度とは

前述のとおり、成年後見制度は、認知症や知的障がいなどで判断能力が不十分な人を法的に支援する仕組みです。
家庭裁判所が選んだ後見人が財産管理や契約行為を代行し、年に一度の報告義務などを通して不適切な行為がおこなわれないよう監督されます。
とくに、不動産の売却や大きな財産行為を伴う場合には、後見人の役割が極めて重要です。
本人に不利な条件で契約が結ばれないよう、後見人が法的観点からチェックし、必要に応じて家庭裁判所に許可を求めることで安全性を高めます。

種類

成年後見制度には「任意後見制度」と「法定後見制度」があります。
任意後見制度は、本人にまだ十分な判断能力があるうちに、自分の代理を務める人と公正証書で契約を結んでおく仕組みです。
判断能力が低下してからは、家庭裁判所が任意後見監督人を選び、契約が発効します。
一方、法定後見制度はすでに判断能力が低下している人が対象で、家庭裁判所への申し立てにより後見人を選ぶものです。
「後見」「保佐」「補助」の3段階があり、本人の状況に合わせて支援の度合いを決定します。
後見は最も判断能力が低いケースで、後見人は広範な代理権を持ち、本人の財産管理や重要な契約を包括的におこなえます。

条件

成年後見制度の利用には、まず本人の判断能力が十分ではないという医師の診断書が必要です。
そのうえで、本人や配偶者、四親等以内の親族などが家庭裁判所に申し立てをおこない、裁判所の審査や面談を経て後見人が選ばれます。
さらに、親が住んでいた自宅を売却する場合などは家庭裁判所の許可が必要です。
これは、本人の生活基盤を守るための制度で、売却の必要性や代金の使い道が明確でなければ許可が下りないこともあります。
後見制度を利用することで、認知症の親の意思能力が不十分な状態でも、法的に有効なかたちで不動産売却や資産管理をおこなうことができるようになります。

まとめ

認知症の親名義の不動産を売却する際は、本人に判断能力がない場合、通常の手続きでは進められません。
委任状だけでの売却や本人に無断での処分は無効となる可能性があり、法的トラブルや資金確保の遅れを招きます。
成年後見制度を活用すれば適切な手続きを通じて売却が可能となるため、制度の理解と準備が重要です。


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